ヒューマンインターフェイスの眼 (その5).

by. 安村通晃 1997.8.11 ('98.4.18, '99.7.12 追記)
  • 嬉しいキーボード (Happy Hacking Keyboard)

    日本の住宅やオフィスは、欧米に比べて狭い。狭いところへコンピュータが たくさんあるので、例えば、一つの机に2つ以上のコンピュータを置くなどは 珍しくない。このとき、一番、邪魔になるのが、キーボードである。マウスも スペースを取る点では問題といえば問題ではあるが、キーボードの場合は、 ふだんほとんど使わない、10キーやファンクションキーなどが余分なスペースを しっかり作っているのだ。
    その典型が Sun のキーボード。大きさが、なんと 506mm X 174mm もある。 本当に必要な、アルファベット、数字と記号、スペース、Return, Control ,Tab, Shift などだけの部分を図ると、大体、295mm x 105mm 程度で済んでしまう。 A4 版の紙を縦方向に折り畳んだサイズだ。こんなキーボードが欲しいとかねがね 思っていたところ、昨年、和田英一先生のデザインによる Happy Hacking Keyboard が世の中にお目見えした。発注時のゴタゴタで入手したのが、この夏の始めであるが、 使ってみると非常に快適である。
    なにしろ、私の普段使っている机には、Sun と Mac が同居していて、ほとんど 二つのキーボードが重なりあってしまうくらいであったのが、このHappy Hacking Keyboardに変えたとたんに、机がすっきりしてしまった。現在、出荷されているのが、 Sun用とPC用だけなので、Mac用のHH Keyboardの製品出荷が待たれる今日この頃である。

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    Sun のキーボード

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    Happy Hacking Keyboard


  • 消えた音引き(長音記号)

    昔自分が、計算機科学や情報処理を専門としていた頃は、コンピュータや コンパイラという表記に何の疑問も抱かなかった。ところが、文系も混ざった 大学に来て、異分野の人と交流するうちに、まず、計算機といったのでは 通じないことが多いので、コンピュータというようになった。
    さらに、この「コンピュータ」を解説するビデオで、専門の読み手が発音すると 最後の、「タ」のところが、ブツッと切れた感じで発音されてしまうことに気が ついた。我々は、元々の英語の発音が頭にあり、コンピュータと書いても、 コンピューターに近い発音をしていたのだ。専門の読み手は、原音とは無関係に 表記通りに忠実に発音しようとして、こうなったのだ。
    また、ある学会から依頼を受け、スーパーコンピュータ用のコンパイラの話しを 書いてくれということで記事を書いたところ、そのタイトルと本文が、ことごとく 「スーパコンピュータ」と直されてしまった。これはおかしいと思い、学会に 問合せをしたところ、学会の規定では、こうなるという説明だった。
    その規定とは、
  • 語尾が、-er, -or で終るものは、音引き(-)をとる。
  • ただし、2文字以下のものはとらない。
  • また、-y で終るものもとらない。
  • などというものであった。
    この規則に従うと、コンピューター → コンピュータ、コンパイラー → コンパイラ、 はともかくとして、モーター → モータ、ペーパー → ペーパ、ドライバー → ドライバ、 ドクター → ドクタ、マスター → マスタ、スリラー → スリラ、オーバー → オーバ、 バッター → バッタ、バンパー → バンパ、などとなってしまう。
    3文字以上はとって、2文字以下は取らないというのも、終始一貫せずに良くない。 カラー → カラ、マナー → マナ、バー → バ、などとなるからである。
    3文字以上では取って、2文字以下では取らないということは、3文字以上では 取ったものが他と区別できるからに過ぎない。発音としては、音引き(長音記号) がついたと同様の発音をしているのなら、たんなる便宜的手段としかいえない。
    このことを私の仲間に聞くと、その人たちの多くは、コンピュータ屋なので、 もうすでに慣れてしまった、違和感を感じないという。
    コンピュータ関係の出版物でも、岩波の「情報科学辞典」では、きちんと音引きが つけられている。そこで、提案したいのは、
  • 日常的に慣用となっているものは、それに従う。例えば、ドクタ → ドクターなど。
  • 基本的には、出版側は著者の意向に従い強制はしない。
  • 異分野の人を含め、この問題を議論する。
  • ということにして貰いたい。なお、スーパーコンピュータ(ー)をスパコンとか、 パーソナルコンピュータ(ー)をパソコン、というのは、略語にあたるので、全く 問題がない。
    [追記] WEB上でこの問題を扱ったページについては、 揺らぐ「コンピューター」表記を参照。また、 インタラクティブ・エッセイ、情報処理'99.6月号にも議論がある。
  • メーカー主導の家電商法

    以前、横長テレビのことを書いたが、コンポーネントオーディオ(いわゆるコンポ) でも、同様なことがある。コンポとは、名前とは裏腹に、セットで売られている。 セット以外で買えないことはないが、高くつく。2、3年前までのコンポは、 アンプ、(FM/AM)チューナー、の他に、CDとカセットがつく場合がほとんどであったが、 ここ1、2年で、カセットが一斉に、MDに替えられてしまった。カセットプレーヤーを 買おうとしても、オプションで取り寄せが必要になる。一方、使いもしない、MD プレーヤーがついてくるというわけだ。カセットウォークマンを持っていても、 カセットプレーヤーを別途購入しない限り、自分の聞きたい音楽が、家の外では 楽しめなくなる。
    まさに、MDウォークマンを売らんがための策略ではないか。一方、MDとDATを 比較すると、音質的には、MDの方が劣るという。なのに、DATのプレーヤーやDAT のウォークマンは数えるほどしか、店頭に並んでいない。
    ユーザー主導でなく、メーカー主導の状況は今後も続くのだろうか?
  • 以上のことで、ご意見のある方は、安村(yasumura(at)sfc.keio.ac.jp)まで。