ヒューマンインターフェイス雑感 (その11).

by. 安村通晃 Feb. 3, 2000 /July 5, 2001
  • 障害者に対する公的補助の実態

    障害者の人と話しをしていて、「ワープロは補助が出るがパソコンには出ない」と いう話を良く耳にする。 朝日新聞2001年7月5日
    実際にはどうかというと、 『現在、厚生省日常生活用具給付事業(国と地方自治体による共同事業)によって ベッドとかと同様に規定されている。コミュニケーション関連の電子機器では 聴覚障害者のFAX、肢体不自由者の携帯型会話補助装置、意思伝達装置、電動タイプ (!)、ワープロなどがあるが、給付を受けられる人は障害等級や身体状況、収入に よって区分されている。地方自治体によってはこれ以外の機器(環境制御装置など 給付品目に無いもの)に対して独自の制度により対応している所もあるが、大変 少ない。 パソコンの給付に関しては日本障害者協議会などから給付へ加えてほしいという 活動は以前より行っているがなかなか難しい問題だ。 ひとつは、「パソコン」以前に例えば環境制御装置なども対象となっていないのが 現実である。』(伊藤英一氏談)
    一部先進的な県では、パソコンに対する補助を行なっているところもある。 岐阜県では県独自で補助を行なっている。一方、神奈川県では、パソコンそのもの よりも、入出力装置がより重要との観点から、入出力装置に対して 補助を出している。 ただ、こういったことを行なっている自治体はまだまだ少ない。
    今や、パソコンは障害者にとって無くてはならぬものに変りつつある。ぜひとも、 公的補助をワープロからパソコンへと広げていきたい。
  • 障害者に対する通信料金割引き制度を

    交通機関などはある割引きが、インターネットや電話料などには無い ので何とかして欲しい、という声も良く耳にする。
    現在ある割引きとしては、税金の控除や非課税、NHK受信料や交通運賃の 割引きがほとんどのようである。 (埼玉県 「障害者施策の充実について」のページより。)
    実際にはどうかというと、 『交通機関なども運営者の判断で割引きされているのが現状である。そのために 現状の無料パス制度をやめるという方向になってきている交通局もある。 また、インターネット接続事業者(ISP)でも数社〜十数社?では割引き制度が ある(障害者手帳のコピーを送るなど手続きが必要)。 NTT電話に関しては設置工事費などで割引があるが、通信料金に関しては無い。 』(伊藤英一氏談)
    いうまでもなく、障害者がメールを送ったりするのは普通の人以上に時間が かかるものである。そういう状況の中で、接続料を割引きしている業者がいるのは 嬉しい限りである。電話料金に関しても何とかならないものかと思う。
  • 字幕放送の実施率向上の必要性

    テレビ番組の字幕放送であるが、アメリカは70%以上なのに対して、 日本はまだ10%程度。この差はどこから来るのだろうか?
    アメリカではほとんどのニュースなどでは人手で字幕を付けている。日本では、 たとえば、NHKがニュースに対して極めて精度の高い音声認識を開発しているにも かかわらず、字幕放送が一般化していない。これは、正確さを要求する視聴者と そのことを懸念する放送業者の問題だろうか? それとも、著作権が壁になって いるのだろうか?
    現状の問題点の指摘としては、著作権審議会マルチメディア小委員会複製検討班に おける 意見聴取(障害者放送協議会事務局まとめ)がある。 著作権の観点からの検討は、文化庁の下で行なわれており、その状況は、 著作権審議会第1小委員会審議のまとめ(1999年12月答申)にある。
    しかし、この著作権の問題と字幕放送の普及とは別の話のようだ。 『民放は、制作コストの負担を嫌って、郵政大臣の情報バリアフリー懇談会で 「あくまでも自主的にバリアフリーに取り組んでいく」と公言している一方で、 その割にはほとんど民法での字幕放送化が進んでない、というのが現状である。 たとえば、郵政省が字幕制作の補助金を5億円を用意しても、今まで自社負担で字幕 を制作していた番組まで補助金で制作しているので、負担ははるか に軽くなったはずだが、補助金をもらった分だけ増えていない。』(高岡氏談)
    ちなみに米国では字幕放送の受信設備が 「テレビジョンデコーダー回路法」(TDCA, 1990年) によって義務づけられており、これにより米国に輸入された日本製テレビを含め、 字幕のデコーダーが最初から内蔵されている (Caption FAQ)という。
    やはり、字幕放送の義務化が字幕放送の普及への道のようである。
  • 以上のことで、ご意見のある方、一緒に研究や開発をやろうという人、私の気づいて いないことをご存知の方は、ぜひ安村(yasumura(at)sfc.keio.ac.jp)までご連絡下さい。
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